
「聞いていた話と違う」を防ぐ!工事業者とのトラブル対策
ビルや賃貸物件の維持管理では、設備の修理や改修、原状回復、外壁工事など、工事業者に依頼する場面が数多くあります。
工事が予定どおり進み、問題なく完了すればよいのですが、実際には「聞いていた工事内容と違う」「追加費用が発生した」「工事日程が変更された」「テナントへの説明が足りなかった」など、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。
こうしたトラブルは、工事そのものの問題だけでなく、工事前の確認不足や関係者間の情報共有不足が原因になることも少なくありません。
管理会社はオーナーと工事業者、そしてテナントの間に立つ立場だからこそ、工事を始める前から確認しておくことが重要です。
今回は、工事業者とのトラブルを防ぐために、管理会社が確認しておきたいポイントを紹介します。
1.工事内容を見積書だけで判断しない
まず確認したいのが、実際に「何を、どこまで工事するのか」という工事範囲です。
見積書には工事内容が記載されていますが、項目名だけでは具体的な作業範囲が分かりにくい場合があります。
例えば「設備修理一式」「内装工事一式」「電気工事一式」などの表記だけでは、どこまでが含まれているのか判断しづらいことがあります。
そのため、管理会社は工事業者に対して、
・施工する場所
・交換・修理する部品
・撤去するもの
・既存設備を残す範囲
・工事に含まれる作業
・工事に含まれない作業
・廃材処分の有無
・清掃の範囲
などを事前に確認しておくことが大切です。
特に「一式」と記載されている項目については、具体的な内容を確認しておくと、後から「そこまで含まれているとは思わなかった」という認識のズレを防ぎやすくなります。
2.追加工事が発生した場合のルールを決めておく
工事を進めていると、着工後に想定していなかった不具合が見つかることがあります。
例えば、壁や天井を開けてみたところ内部の配管に問題があった、設備を取り外したところ別の部品も交換が必要だった、といったケースです。
このような場合、追加工事が必要になることがあります。
問題なのは、追加工事について事前の確認がないまま作業が進み、工事終了後に追加請求が発生するケースです。
そのため、
「追加工事が必要になった場合は、作業前に管理会社へ連絡する」
「追加費用が発生する場合は、金額を確認してから進める」
といったルールを、あらかじめ工事業者と共有しておくことが重要です。
緊急対応などで事前承認が難しい場合もあるため、一定金額までは現場判断を認めるなど、物件や工事内容に応じてルールを決めておくとスムーズです。
3.工事日程と作業時間を明確にする
工事の日程もトラブルにつながりやすいポイントです。
管理会社が「○日から工事開始」と認識していても、業者側では搬入日や準備日を含めて考えていることがあります。
そのため、
・搬入日
・着工日
・作業予定日
・完了予定日
・作業時間
・休日の作業の有無
・夜間作業の有無
などを具体的に確認しておきましょう。
特にテナントが入居しているビルでは、工事の音や振動、共用部の使用などが発生する可能性があります。
テナントへの案内が必要な工事の場合、工事業者から予定変更の連絡が遅れると、管理会社側の案内も間に合わなくなることがあります。
「日程変更が発生した場合は、判明した時点ですぐに管理会社へ連絡する」という連絡体制を作っておくことも大切です。
4.テナントへの影響を事前に確認する
工事業者とのトラブルを防ぐためには、業者とのやり取りだけでなく、工事によってテナントにどのような影響があるのかを確認することも重要です。
例えば、
・騒音や振動
・断水
・停電
・空調停止
・エレベーター停止
・共用部の通行制限
・臭いの発生
・工事車両の出入り
・資材の搬入
などが考えられます。
工事業者から「通常の工事なので問題ありません」と言われても、テナントにとっては営業に影響する可能性があります。
そのため管理会社は、業者から工事内容を聞くだけでなく、「この工事によって建物を利用する人にどのような影響が出るのか」という視点で確認することが必要です。
5.現場での責任者と連絡先を確認する
工事中に問題が発生したとき、誰に連絡すればよいのか分からない状態は避けたいものです。
工事業者の担当者だけでなく、実際に現場を管理する責任者や職長などの連絡先を確認しておきましょう。
また、管理会社側についても「誰が工事の窓口になるのか」を明確にしておくことが大切です。
連絡先を一本化しておけば、テナントから問い合わせがあった際にも対応しやすくなります。
複数の業者が入る工事では、電気業者、設備業者、内装業者など、それぞれの役割と連絡体制を整理しておくと、責任の所在が曖昧になることを防げます。
6.工事前に現場の状態を確認・記録する
工事前の状態を記録しておくことも、トラブル防止につながります。
工事後に「もともとあった傷なのか、工事中についた傷なのか」が分からなくなるケースがあるためです。
必要に応じて、
・工事前の写真
・設備の状態
・壁や床の傷
・共用部の状態
・搬入経路
などを記録しておきましょう。
特に共用部やテナント専有部を通って資材を搬入する場合は、床や壁などの状態を事前に確認しておくと安心です。
写真を残しておけば、万が一問題が発生した際にも、状況を確認しやすくなります。
7.工事中の変更は必ず記録する
工事中には、現場の判断によって予定していた内容が変更されることがあります。
その場では小さな変更に思えても、後になって「なぜ変更したのか」「誰が了承したのか」が分からなくなることがあります。
そのため、変更が発生した場合は、
「変更内容」
「変更理由」
「追加費用の有無」
「誰が了承したか」
「写真」
などを記録しておくことがおすすめです。
電話で話した内容についても、重要な事項であればメールなどで確認を残しておくと、後から内容を確認しやすくなります。
8.工事完了後は「終わった」で済ませない
工事業者から「工事完了しました」と報告を受けたら、それで終了ではありません。
管理会社として、依頼した内容が予定どおり施工されているか確認することが重要です。
例えば、
・依頼した箇所がすべて施工されているか
・設備が正常に動作するか
・周辺に傷や汚れがないか
・廃材が残っていないか
・共用部が元の状態に戻っているか
・写真や完了報告書が揃っているか
などを確認します。
設備工事の場合は、単に交換しただけではなく、実際に正常に作動するかまで確認しておくことが大切です。
9.工事記録を残して次回の管理に活かす
工事が終わったら、工事内容や費用、使用した部品、施工日などを記録しておきましょう。
修繕履歴が残っていれば、数年後に同じ設備で不具合が発生したときにも、過去の対応を確認できます。
また、同じ設備について修理を繰り返している場合には、「修理を続けるのか」「交換を検討するのか」という判断材料にもなります。
工事業者とのやり取りや完了報告をその場限りにせず、物件の管理情報として蓄積していくことが、長期的な管理品質の向上にもつながります。
工事トラブルは「確認の積み重ね」で防ぐ
工事業者とのトラブルは、工事業者だけに原因があるとは限りません。
「工事内容の認識が違っていた」「追加費用の確認ができていなかった」「日程変更が共有されていなかった」など、関係者間の情報共有不足から問題が発生することもあります。
管理会社に求められるのは、工事を業者に任せることだけではありません。
工事前に内容を確認し、工事中は状況を把握し、工事後には結果を確認して記録する。
この一連の流れを丁寧に行うことで、トラブルの予防につながります。
特に複数の関係者が関わるビル管理では、「言った・言わない」を防ぐための記録と、「聞いていなかった」を防ぐための情報共有が重要です。
工事をスムーズに進めるためにも、管理会社が確認すべきポイントをあらかじめ整理し、業者との共通認識を作っておくことが大切です。